[メイン] GM : 2月14日、バレンタインデー。

[メイン] GM : その日は感謝の想いを込めて、友だちへと送ったり。

[メイン] GM : 普段秘める想いを、この日のためにと一大奮起し、伝えたり。

[メイン] GM : そういう、特別な日だ。

[メイン] GM : ただ、この裏の労力も知らない男子も存在するわけで────

[メイン] GM :  

[メイン] GM :  

[メイン] GM :  

[メイン] 友人 : 「頼む…二人とも…この通りだ!」

[メイン] 友人 : 放課後、夕方。

[メイン] 友人 : 落ちる日の光が若干教室に差し込む場所にて。

[メイン] 友人 : 手を合わせ、頭を下げ…二人の女子へと頼み事をする男子一人。

[メイン] 友人 : 「白金から貰ったチョコを無くしちまったんだよ…!」

[メイン] 佐倉 杏子 : 机に座りながら、足を行儀悪く垂らし。

[メイン] 東横 桃子 : 「ふむふむ……」
目に黒い髪の毛が少し掛かった、幸薄そうな少女、その男の子の話を聞き、うんうんと頷く。

[メイン] 佐倉 杏子 : 半ばあきれ顔で、ポッキーをつまみながら。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ああ……?そもそも、無くすもんなのかねえ…?」

[メイン] 東横 桃子 : バレインタインデー、っすか……。
大切な人から貰ったチョコを失くしちゃうのは、ちょっといただけないものではあるっすけど……。

[メイン] 東横 桃子 : でも……それでも、やっぱり想いを込めて作った物だから……。

[メイン] 東横 桃子 : 「カバンの中とか、よーく探したっすか?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「だーいぶ大切なものだぞ?桃子もそう思うよな?」

[メイン] 友人 : 「ああ……俺の持ってるものはすべてチェック済みだ」

[メイン] 東横 桃子 : ちょっと、放っておけない部分は、あるっす。

[メイン] 東横 桃子 : 「あはは……そうっすね杏子さん……」

[メイン] 佐倉 杏子 : バレンタインデー、ねえ。
あたしにゃ関係ないが、チョコが貰える日ならいいもんだけどな。

[メイン] 佐倉 杏子 : その答えを聞いて、にやりと笑い。

[メイン] 東横 桃子 : 「食べ物に関しては、杏子さんはとにかくうるさいっすからね~」
あはは、と愛想笑い。

[メイン] 東横 桃子 : それに、うちはこうして……誰かに頼られるだなんて、これまで無かったことっすから。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「そんな大切な物、他人に探してもらうっていうのがどうかと思うけどな?」

[メイン] 東横 桃子 : だから……その感覚が、少しむず痒くもあり……どこか、心地良くもあって……。

[メイン] 佐倉 杏子 : 食べ物に五月蠅いという言葉に…へっ、と笑いながら。

[メイン] 東横 桃子 : 「まぁまぁ杏子さん」

[メイン] 友人 : 「うぐっ…」

[メイン] 東横 桃子 : 「とにかく、この人にとっては大切なものなのは間違いないっすから、ね?」
男の子に、ニコ、と笑ってみせる。

[メイン] 佐倉杏子 : 「……ま~~、そうかもしれないけどさ」
その笑みを見て、にやけ笑いが止まる。

[メイン] 東横 桃子 : 「それに、杏子さん」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「じゃアレかい?桃子は”他人の大切な物”とやらを探すつもりで?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「うん?」

[メイン] 東横 桃子 : 「他人の不幸、このまま見捨てるっす~?」
少し挑戦的な視線を送る。

[メイン] 東横 桃子 : 「うちは、探すの手伝ってあげるっすよ~!」
腕捲りするポーズを見せ。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……」
その視線を受け。

[メイン] 佐倉 杏子 : 食べていたポッキーをぱきりと、割る。

[メイン] 東横 桃子 : ……あ。

[メイン] 東横 桃子 : もしかして、怒っちゃったっすかね……?

[メイン] 東横 桃子 : 少し不安げな表情を浮かべる桃子。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「はぁ~~~……ったく」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「んな言葉使われちゃNOとも言えないじゃんか」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「お人好しの桃子に、手伝ってやるよ」
そのままひょいと、机から降りて。

[メイン] 東横 桃子 : その答えに、安堵を息をつき。

[メイン] 佐倉 杏子 : まぁ…
他人の不幸なんて、見捨てるのも気持ち悪い…が。

[メイン] 東横 桃子 : えへへ、と笑ってみせる。

[メイン] 東横 桃子 : 「そう言う杏子さんもお人好し、っす!」

[メイン] 佐倉 杏子 : 桃子に見抜かれてるとはな。
……普段存在感薄いくせに、こういう時はしっかりとしてやがる。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……っ」

[メイン] 東横 桃子 : 「初めて会った時は、とにかく怖い人って感じだったっすけど……」

[メイン] 東横 桃子 : 「でも、こうして手を差し伸べてくれる優しさ、温かさがあるっす」

[メイン] 佐倉 杏子 : その言葉が恥ずかしかったのか。
少しそっぽを向いて、ポッキーの空き箱をゴミ箱へと投げ捨てる。

[メイン] 東横 桃子 : 「うち、もう杏子さん、怖い人だって思わないっすよ~」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……そんな簡単に人を信用していいのか~?何かたくらんでるかもしんないんだぞ」

[メイン] 東横 桃子 : 「あ、ゴミを投げ捨てるの良くないっすよ~?不良っす不良~」

[メイン] 東横 桃子 : 「? じゃあ何を企んでるっす?」
きょとん、とした表情を浮かべながら、小首を傾げる。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「うるせいやい」
顔をゆっくりと戻して。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……ん、んん」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……お前にお菓子をたかってる事とか、かもな」

[メイン] 東横 桃子 : 「……ぷっ!」

[メイン] 東横 桃子 : ちょっと吹き出してしまう。

[メイン] 佐倉 杏子 : 頭の中で一瞬、『仲良くなる事』…とか思いついたが。
んなもん恥ずかしくて…言えるか。

[メイン] 東横 桃子 : 「あはは~!子どもみたいっす~!トリックオアトリートっすか?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「あっ…!?んだと!?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 子どもという言葉にかちん、と来たのか。
眉を曲げながら。

[メイン] 東横 桃子 : 「冗談っす冗談、ほらほら、チョコ探し、行くっすよ~?」
杏子の背中をぐいぐい押しながら。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「はいはい、じゃー金剛…そういう事で」

[メイン] 佐倉 杏子 : そのまま、背中を押されたまま教室を出ていく。

[メイン] 友人 : 「またね~~~~~!!」

[メイン] 佐倉 杏子 : そして流されていくように……

[メイン] 佐倉 杏子 : の、前に。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「一応チェックだ、教室とかにおいてないかね」

[メイン] 東横 桃子 : 「おっと……確かに、そうっすね」

[メイン] 東横 桃子 : 「机の中の奥とかに、もしかしたらあるかもっすね?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「そうだね。お前みたいに、ひっそりと存在感消してるかもな?」

[メイン] 東横 桃子 : 「むむむっ……!」
ほっぺを少し膨らませる。

[メイン] 佐倉 杏子 : へへっ、と笑いながら。

[メイン] 東横 桃子 : 「うちの存在感いじりはやめるっす~!」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「おっと、怒っちゃったか?」
悪い悪い、と付け足しながら。

[メイン] 東横 桃子 : 「そーっすよー!怒っちゃったっすよー?」

[メイン] 東横 桃子 : 「だって今は─────」

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン] 東横 桃子 : 「─────こうして杏子さんの前に、うちはちゃんといるっす!!」
ずい、と一歩近づき。

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン] 佐倉 杏子 : 「────っ!?」

[メイン] 佐倉 杏子 : ぽろ、食んでいたポッキーが落ちかけて。

[メイン] 佐倉 杏子 : ち、かっ…!?と、というか…!?

[メイン] 東横 桃子 : 「…ふふ、ビックリしちゃったっす?」
悪戯な笑みを浮かべながら。

[メイン] 佐倉 杏子 : 桃子って、いつも…こんな、主張する奴じゃなかったよな…!?

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……あ、ああ……あーそうだな、驚かされちゃったよ」

[メイン] 東横 桃子 : 「うちだって、やる時はやる子っす!」
にへへ、と笑いながら。

[メイン] 佐倉 杏子 : 顔を平静としたものに戻して。

[メイン] 東横 桃子 : 「それにうちはもう─────"ひとりぼっち"じゃないっすからね~」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「トリートをくれない分、トリックしたわけか?」

[メイン] 東横 桃子 : 「ふっふっふ、そういうことっす!」
どや顔。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「”ひとりぼっち”、ね」

[メイン] 佐倉 杏子 : 窓の外を、数刻見つめた後。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ま、そうじゃないってんなら…あたしはあんたのためになれてるのかもな?」

[メイン] 東横 桃子 : 「……ふふ、ちゃんとうちのこと見てくれてるっすからね、杏子さんは」

[メイン] 東横 桃子 : 「だから、嬉しいっす!」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「………ん、まぁ…なら、良かったよ」

[メイン] 東横 桃子 : 「……ん~~……それにしても、見つからないっすね~?」
机の中を色々探しながら。

[メイン] 佐倉 杏子 : 頭に手を当てながら。

[メイン] 佐倉 杏子 : 誰かのためになる…なんて、前なら考えもしないことだったが。
こうして桃子に付き合って、お人好しになってる…もんな。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ん、こっちもだ……」

[メイン] 東横 桃子 : 「となると……もうこの教室にはないっすかね?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「流石に自分の教室に忘れるほど、バカでもないか」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ん、別のとこ探した方がいいかもな」

[メイン] 東横 桃子 : 「あはは……バカ呼びはひどいっすよ~?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「事実さ、食べ物粗末にするやつはみんなバカだ」

[メイン] 東横 桃子 : ……こういう部分、杏子さんの育ちの良さが伺えるっすよね~。

[メイン] 東横 桃子 : おうち、行ったことないっすけど。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「なんだい、じっと見て?」

[メイン] 東横 桃子 : 「あ、いえいえ!何でもないっす!」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「これでも欲しくなったか?」
新たに2箱目を開けている。

[メイン] 東横 桃子 : 「! ……いいんすか?それ、杏子さんのっすよね?うちなんかが貰っちゃっていいんすか?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ああ?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「そりゃお前────」

[メイン] 佐倉 杏子 :  

[メイン] 佐倉 杏子 :  

[メイン] 佐倉 杏子 : 「『桃子だからこそ』あげるんだよ」

[メイン] 佐倉 杏子 :  

[メイン] 佐倉 杏子 :  

[メイン] 佐倉 杏子 :  

[メイン] 東横 桃子 : 「………!!」
ドキンっ。と心臓が跳ねる。

[メイン] 東横 桃子 : 顔も少し赤くなり。

[メイン] 東横 桃子 : 「……き、急にそう言われちゃうと……何て返したらいいか、分からなくなっちゃうっす……」

[メイン] 東横 桃子 : 「ひょっとしてそれも、杏子さんのトリックだったり……っすか……?」

[メイン] 佐倉 杏子 : あきれ顔だったのが、その反応を見て頬が少し赤くなるが。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「んだよ、そんな反応して…」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「あたしだって、あんたがいるから”ひとりぼっち”じゃないんだ」

[メイン] 佐倉 杏子 : 少し唇を尖らせながら、箱の口は向けたまま。

[メイン] 東横 桃子 : 「………えへへ……そう、っすか……」
恥ずかしそうに、頬を掻きながら。

[メイン] 東横 桃子 : 分からないっすけど、もしかしたら、テレビドラマとかでよくテーマになってる青春って

[メイン] 東横 桃子 : こういうことなのかなぁ……って思う、うちなのであったっす。

[メイン] 東横 桃子 : 「……それじゃあ、一本、いただいちゃうっす」
ニコ、と笑いながら。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……ん、どーぞ」

[メイン] 佐倉 杏子 : にっ、と笑いを返して箱から一本。

[メイン] 佐倉 杏子 : …こいつも変わったよな。
前まで、全然前に出ないし、クラスの中でも空気だったのに……

[メイン] 佐倉 杏子 : あたしといる時は、こうして自分の事もしゃべる様になってる…
……あたしと、か。

[メイン] 佐倉 杏子 : ……なんか、嬉しいような。

[メイン] 東横 桃子 : 「杏子さん~?」
ほっぺをつんつんと突っつく。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「んがっ…」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……ごめんごめん、全部は取るなよ~?」

[メイン] 東横 桃子 : 「うち、そんな大食いじゃないっす!」

[メイン] 東横 桃子 : 「それよりも、ほら次行くっすよ~?」

[メイン] 東横 桃子 : 「教室に無いとすると……下駄箱とか、どうっすかね?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「はいはい~、桃子はいい案ありそー………」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「下駄箱、か…確かにあり得るかもな」

[メイン] 東横 桃子 : 「ふふ~ん」
どや顔。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「やるじゃん、えらいえらい」
どや顔に、思わず頭を撫でて。

[メイン] 東横 桃子 : 「わ……こ、子ども扱いっすか~……?」
少し頬を膨らませながらも。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「まあまあ、名推理だって事で」
先ほど、不意を突かれたお返しもある。

[メイン] 東横 桃子 : 「むぅ……それなら良いっすけど~……」

[メイン] 東横 桃子 : そうして、うちらは下駄箱まで移動するも……。

[メイン] 東横 桃子 : やはり、チョコらしきものはどこにもなく。

[メイン] 東横 桃子 : 「むむむ……」

[メイン] 東横 桃子 : 「当てが外れてしまったっす、残念っす……」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「んん~、残念」

[メイン] 東横 桃子 : 「……下駄箱にチョコを入れるって、ひょっとしたら時代遅れ気味だったり、っすかね……?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「まあどうだろうなぁ…」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「あたし、貰ったことも渡そうと思ったこともないからわかんないね。桃子は?」

[メイン] 東横 桃子 : 「うちは………」

[メイン] 東横 桃子 : 「………ヒミツっす!」

[メイン] 東横 桃子 : 口の前に人差し指をクロスさせ、バッテンマーク。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「へえ~?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ま、桃子って、作ろうと思ったら気合入れて作りそうだねえ」

[メイン] 東横 桃子 : 「な、なんすかその目……!まだ教える気はないっすよ……!」

[メイン] 佐倉 杏子 : バッテンマークを見ながら、にやにやと。

[メイン] 東横 桃子 : 「……う、ま、まぁ……」

[メイン] 東横 桃子 : 「……バレインタインデーは……"大切な日"……っすからね」

[メイン] 東横 桃子 : 「この日の乙女は、みんな気合を入れるって、テレビとかで見たっすし……」

[メイン] 東横 桃子 : 「……杏子さんこそ!バレンタインチョコをあげる相手とか、いない……っすか?」

[メイン] 東横 桃子 : 「本当の本当に、いないっすか?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「らしいね、今日も浮足立ってたし」
最近テレビも見ていないが…そういうもんだろう。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ああ、それはだな…」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「いるかもしれないし、いないかもしれない」

[メイン] 東横 桃子 : 「んなっ……!」

[メイン] 東横 桃子 : ガーン。何故かショックを受ける桃子。

[メイン] 佐倉 杏子 : へへ、と笑って見せる。さっきのお返しだ。

[メイン] 東横 桃子 : 杏子さんが、チョコをあげる相手が、いるかもしれない……?

[メイン] 東横 桃子 : うぐぬぬぬ……!!な、なんでしょう、すっごく気になるというか……。

[メイン] 佐倉 杏子 : そうして、ふと。

[メイン] 東横 桃子 : モヤモヤ、するっす………!!

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ああ、いや……”あげた”相手ならいるよ」

[メイン] 東横 桃子 : 「………!?!?!?」

[メイン] 東横 桃子 : 目が真ん丸になる。オーバーなリアクション。

[メイン] 東横 桃子 : 「だ、誰っすか!?!?どこのクラスっすか!?男の子っすか!?女の子っすか!?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「っ、くく…」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「…あんたのよーく知ってる人だよ」

[メイン] 佐倉 杏子 : そんなリアクションが面白く、つい。

[メイン] 東横 桃子 : 「うちの!?」

[メイン] 東横 桃子 : 「うーーん、うーーーん……!!」
腕を組みながら唸る。

[メイン] 東横 桃子 : 「もしや……校長先生!?」
狼狽のせいで、素っ頓狂な答えが飛び出てしまう。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「んなわけないだろ!?」

[メイン] 佐倉 杏子 : そんな答えに、思わず大声を出してしまって。

[メイン] 東横 桃子 : 「じゃあ教頭先生!!」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「だから違うって!……その相手はだなー」

[メイン] 佐倉 杏子 : 指をゆっくりと、桃子へと指さす。

[メイン] 東横 桃子 : 「…………へ?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「あんただよ、東横桃子」

[メイン] 東横 桃子 : 「~~~~~~~~~~~~っ!!?!?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ほら、さっきやったろ、ポッキー」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「あれもチョコじゃん?」

[メイン] 東横 桃子 : 「ぐぬぬぬぬ……!!!」

[メイン] 東横 桃子 : 「一本、取られてしまったっす……!悔しいっす……!!」

[メイン] 佐倉 杏子 : そうして、狼狽する彼女が面白く。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「っくく、あっははは……」

[メイン] 東横 桃子 : ポッキーだけに、なんて思いながら。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「さっきのいい顔してたよ、っはは…!」

[メイン] 東横 桃子 : 「……今に見てるがいいっすよ~」

[メイン] 佐倉 杏子 : ああ、ほんと……桃子といると、退屈しないね…

[メイン] 東横 桃子 : 「その杏子さんの顔、びっくり仰天させてやるっすから……!!」
ビシッ、と指差しながら。

[メイン] 佐倉 杏子 : ……楽しいね、うん。

[メイン] 東横 桃子 : 「……今は、まだ……その時じゃ、ないっすけど」
小声で、ぼそっと呟きながら。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「日が変わる前に出来るかね~?少なくとも、探し物続けてる内は無理そうだ」

[メイン] 佐倉 杏子 : 小声の声も聞きとれず。

[メイン] 東横 桃子 : 「……そうっすね……チョコ、どこにあるっすかね~」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「んー……あいつ、演劇部とかだったし…部室に残ってるかも?」

[メイン] 東横 桃子 : 「なるほどなるほど……!それは、大いにありそうっすね……!!」

[メイン] 東横 桃子 : 「名案っす!さすがっす!」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「へへへ~~」

[メイン] 東横 桃子 : 「それにしても演劇っすか……杏子さんは、演劇とかって興味あるっす?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 些細なことだけど…桃子に褒められるのは、うん…いいね

[メイン] 佐倉 杏子 : 「演劇、ねえ…」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……ま、演じるまでもないくらいに、今までが波乱万丈だったもんでね」

[メイン] 東横 桃子 : 「……もしかして……聞いちゃまずいこと、っすかね……?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「いーよいーよ、今は割と踏ん切り付いてるから」

[メイン] 東横 桃子 : ……杏子さんの、過去……。

[メイン] 東横 桃子 : 正直、超気になるっす。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「そういう桃子は、やってみたいと思わないの?」

[メイン] 東横 桃子 : 「うぇっ……!?うちは、うちは……」

[メイン] 東横 桃子 : 「……存在感、無いっすから……不向きっすよ、あはは」

[メイン] 東横 桃子 : なんて思いながら……舞台に立つ"主演"に、少し憧れを持つ気持ちは……。
……今となっては、無くは無い、と思えてきて。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ん、だからこそ映えそうだけどね」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「普段目立たない桃子が、そういう場で自分を魅せる…なんて、良さそうだし」

[メイン] 東横 桃子 : 「え……」

[メイン] 東横 桃子 : 「……そう……っす、かね……?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「あたしと喋ってる時の桃子は、生き生きしてて…演じるまでもなく、”主演”だからね」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「だから、そう思ったのさ」

[メイン] 佐倉 杏子 : へへっ、と笑いながら。

[メイン] 東横 桃子 : 「──────────!!!」

[メイン] 東横 桃子 : ……こんなこと、言われたら、うち……うち……!!

[メイン] 佐倉 杏子 : 「それとも、その”主演”じゃ不満かな?」

[メイン] 東横 桃子 : 「……不満じゃないっす!!!」

[メイン] 東横 桃子 : 「……うちは、みんなの"主演"になれなくても……」

[メイン] 東横 桃子 : 「杏子さんにとっての"主演"になることができたら……それは、素敵なことだって、思えるっす……」

[メイン] 東横 桃子 : えへへ、と照れ笑いしながら。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「…ん、んん~~………」

[メイン] 佐倉 杏子 : 言った手前、アレだが。

[メイン] 佐倉 杏子 : ……割と…そんな事言われて、あたしも…嬉しいな…

[メイン] 佐倉 杏子 : 「…それなら、よかったよ」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「桃子が演劇部に入ったら、こうやって揶揄う時間もなくなりそうだからな~」

[メイン] 東横 桃子 : 「……そんな予定は、無いっすよ」

[メイン] 佐倉 杏子 : そうなるのは…寂しいような……。

[メイン] 東横 桃子 : 「だって、杏子さんと一緒にいる時間の方が……うち、楽しいっすから」
ニコ、と笑う。

[メイン] 佐倉 杏子 : ……”ひとりぼっち”になるのは、辛いものだから。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……っ、んん」

[メイン] 東横 桃子 : 「……えへへ、やっぱり、ちょっと……恥ずかしい、っすね……?」
顔が赤くなりながら。

[メイン] 東横 桃子 : 「ていうか、あれっす!もし演劇部に入ることになったら、杏子さんも一緒がいいっす!」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ったく…恥ずかしがるなよ……あたしまで恥ずかしいじゃないか…」
むう、少し頬を膨らませつつ。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……あたしも?なんでだい」

[メイン] 東横 桃子 : 「うちがそうしたいからっす!」

[メイン] 東横 桃子 : 「……っていう理由は、だめ、っすか……?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「…………」

[メイン] 佐倉 杏子 : 思わず、あっけに取られて。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「いや、ううん」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……桃子の癖に、言うじゃんか」

[メイン] 東横 桃子 : 「……えへへ」

[メイン] 佐倉 杏子 : ……「あたしも、それがいい……」なんて、口が裂けても言えないね。

[メイン] 東横 桃子 : 「……ほ、ほら、杏子さん……!チョコ!チョコ探しっす!」

[メイン] 東横 桃子 : 恥ずかしさに、話を逸らすように。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ん、へいへい~……」

[メイン] 佐倉 杏子 : ……逸らされて助かった、とも。

[メイン] 佐倉 杏子 : その後、演劇部に話してみても、部室内を探してもそのような物はなく。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ありゃりゃ、ここもダメか」

[メイン] 東横 桃子 : 「むむぅ……ありそうだと思ったっすけどね……残念っす……」

[メイン] 東横 桃子 : 「こうなると……もうどこにあるのか、皆目見当つかないっすね……?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ん~~~……だね」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「桃子も、思いつかない?」

[メイン] 東横 桃子 : 「う~~~~~ん、そうっすねぇ……」

[メイン] 佐倉 杏子 : ひとしきり悩んでみても、ぱっとは思いつかない。

[メイン] 東横 桃子 : 腕を組みながら、うんうんと考え。

[メイン] 東横 桃子 : 「……一先ず!片っ端から、色んな教室内を探しちゃおうっす!」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ほほう」

[メイン] 東横 桃子 : 「例えば……移動教室に使われた部屋とか……」

[メイン] 東横 桃子 : 「……さすがに、化学室とかには、無い……っすよね……?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「化学室、かあ」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「移動教室には~…なってたし、あり得るかもね」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「うん、悩んでるよりよっぽど良さそうだ」
にっ、と笑って。

[メイン] 東横 桃子 : 「! えへへ」
その笑みに、なんだか嬉しくなり。
笑い返し。

[メイン] 東横 桃子 : 「それじゃあ……チョコ探索隊、出発進行っす~!」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「はいはい、出発っと」

[メイン] 東横 桃子 : そうして、化学室へ向かうも……。

[メイン] 東横 桃子 : ……そもそも、様々な薬品が置いてある部屋、ということもあり。

[メイン] 東横 桃子 : 必要時以外は、施錠してあり。

[メイン] 東横 桃子 : 「ガ~ン!っす……!!」

[メイン] 東横 桃子 : 「そもそも、入ることができないっす……!」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「………あー」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ホントだ、開かないね」

[メイン] 佐倉 杏子 : ガチャガチャと動かすも、戸全体は動かない。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……もしこの中に合ったら、迷宮入りだね~」

[メイン] 東横 桃子 : 「むむむ……そうなったら、チョコを渡した子が、可哀想っす……!!」

[メイン] 東横 桃子 : 「杏子さん!どうにかしてこの中に入る方法とか、無いっすかね……!?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「あーーー……んん」

[メイン] 佐倉 杏子 : 魔法少女の力を使えば、扉を開くことは出来るだろう。
最も…強引に、だが。

[メイン] 佐倉 杏子 : そりゃまあ、桃子に悪いな。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「先生に鍵を借りる、とかかな」

[メイン] 佐倉 杏子 : 無難な案を、一つ。

[メイン] 東横 桃子 : 「!!! そ、その手が……!」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ついでに先生にも話聞いて、チョコが無いか聞ける」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「一石二鳥って奴だな」

[メイン] 東横 桃子 : 「おお……!!ていうか、そうっすね……」

[メイン] 東横 桃子 : 「初めから、先生に聞くのが早かったかもっすね……?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ま~」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「来たからこそ、今の案が出たんだからね」

[メイン] 東横 桃子 : 「……杏子さん、そういう直観力は冴えてるっすけど」

[メイン] 東横 桃子 : そう言い、化学室のプレートを見て。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「桃子が言ってくれたから、気づけたのも……ん?」

[メイン] 東横 桃子 : 「……学校の成績とかは、大丈夫っすか?」

[メイン] 東横 桃子 : ふと、気になった。

[メイン] 東横 桃子 : 素行が荒っぽい杏子だからこそ、学生の本分である勉強は、大丈夫なんだろうか……?という、お節介。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……出席足りてないかもね」

[メイン] 東横 桃子 : 「!?」

[メイン] 東横 桃子 : 「留年しちゃうっすよ~!?それは、だめっす~!!」

[メイン] 佐倉 杏子 : そう、そもそも学校に通う日も少ない。
そういう面でも、不良少女の佐倉杏子。

[メイン] 佐倉 杏子 : む、と。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「どうしてあたしの進学を、あんたが気にするのさ?」

[メイン] 東横 桃子 : 「だ、だって……そりゃあ……」

[メイン] 東横 桃子 : 「……この先も、杏子さんと一緒に、過ごしたいから……っす」

[メイン] 東横 桃子 : 「き、杏子さんは、どうなんすか!」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「………」

[メイン] 佐倉 杏子 : あたしと……一緒に……

[メイン] 佐倉 杏子 : 「っ、まぁ…」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「あたしだって、出たくなくて出てない訳じゃないよ」

[メイン] 佐倉 杏子 : 事実、杏子が学校に来るようになったのも桃子のお陰な所がある。

[メイン] 佐倉 杏子 : 元々、杏子は”ある理由”でいじめに遭っており。

[メイン] 佐倉 杏子 : そんなものに合うなら、そもそも来なければいいと思っていたからだ。

[メイン] 東横 桃子 : 「…………」
杏子の表情に浮かぶ陰りに、何かを察する桃子。

[メイン] 東横 桃子 : 踏み込んじゃいけないような、そんな気はする。
でも、うちは、それでも……杏子さんのこと、もっと知りたいっすから。

[メイン] 東横 桃子 : 「……聞かせてもらっても、いい、すか……?」

[メイン] 東横 桃子 : 「学校に、あんまり行かない理由」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……ん」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……」

[メイン] 佐倉 杏子 : 桃子のこちらを見る目が、真剣なものであることに気づき。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「まぁ、桃子ならいいかもね」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「大したことでもないさ、クラスの奴らに無視されてるだけ」

[メイン] 東横 桃子 : 「え………」

[メイン] 佐倉 杏子 : 無視というより…腫物に触るような感覚かもしれないが。

[メイン] 東横 桃子 : クラスの人に無視……それは、桃子もそうだった。

[メイン] 東横 桃子 : でも、自分と杏子は対極に位置するような性格で。

[メイン] 東横 桃子 : 暗い自分に対し、杏子さんは明るい。

[メイン] 東横 桃子 : だからこそ、それが意外で。

[メイン] 東横 桃子 : 「……嫌、っすよね……」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……嫌?」

[メイン] 東横 桃子 : だから、杏子さんは、学校に来なくなったのだから。

[メイン] 東横 桃子 : 「うちも昔は、クラスの人にたくさん無視されてきたっす、でも……」

[メイン] 東横 桃子 : 「うちは、それが当たり前だって思ってきて、逆に……その方が、楽に生きられるって、思ってたんすけど……」

[メイン] 東横 桃子 : 「でも、杏子さんは、それが嫌だった……だから、来なくなった……」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……楽に生きられる?」

[メイン] 東横 桃子 : 頷く。

[メイン] 佐倉 杏子 : ぴくり、と眉が動き。

[メイン] 東横 桃子 : 「……あはは、昔はうち……あんまりこうして、人と会話するの、得意な方じゃなかったんっす」

[メイン] 東横 桃子 : 「それで、コミュニケーションに割くリソースを、自分のためだけに使うことができたら、その方が生きる上で、効率的だなって、思い込んでたっす」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「へえ……」
だからこそ…桃子も、存在感がないと言われてしまっている所もあるのかもな、と思いつつ。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ああ、それはあたしも同意見だね」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「自分を助けてくれるのは自分だけ、だからこそ自分に頼る
それが賢い選択肢だ」

[メイン] 佐倉 杏子 : 先生にも相談しなかったのも、それだ。

[メイン] 東横 桃子 : 「……うちら、似た者同士だったんっすね」
にへらと笑いながら。

[メイン] 佐倉 杏子 : 他者に期待するより、自分が変わるしかない。

[メイン] 東横 桃子 : 「だから、惹かれ合ったんっすかね……?……なんちゃって……」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ははっ、かもね」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「そういう事だって、あたしは…信じるよ」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「似た者同士の方が、悪い感じはしないしね……」

[メイン] 佐倉 杏子 : へへ、と釣られて笑ってしまう。

[メイン] 東横 桃子 : 「……ふふ、その方が……うちも、嬉しいっす……!」

[メイン] 東横 桃子 : えへへ、と笑いながら。

[メイン] 東横 桃子 : 「……そろそろ、行くっす?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ん、ああ」

[メイン] 佐倉 杏子 : そんな自分が、他人のために他人の力を借りるなんて…ね。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「桃子も、今の生き方の方が……”楽しい”かい?」

[メイン] 佐倉 杏子 : なんとなく、思いついた事を言って。

[メイン] 東横 桃子 : その問いに、桃子は。

[メイン] 東横 桃子 : 明るい笑顔を、杏子に向け。

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン] 東横 桃子 : 「─────はい!!」

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン] 東横 桃子 : 元気よく、頷くのだった。

[メイン] 佐倉 杏子 : それに、へへ、と笑う。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ああ、奇遇だね」

[メイン] 佐倉 杏子 :  

[メイン] 佐倉 杏子 :  

[メイン] 佐倉 杏子 :  

[メイン] 佐倉 杏子 : 「────こんな所まで、”似た者同士”だ」

[メイン] 佐倉 杏子 :  

[メイン] 佐倉 杏子 :  

[メイン] 佐倉 杏子 :   

[メイン] 佐倉 杏子 : そう、笑って返すのだった。

[メイン] 東横 桃子 : 放課後の、茜色の夕焼けの光が、二人へ差し込む。

[メイン] 東横 桃子 : 二人以外、誰もいないこの空間。

[メイン] 東横 桃子 : 「……えへへ」

[メイン] 東横 桃子 : 朱に染まるその頬が、夕焼けの色で誤魔化される。

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン] 東横 桃子 : そうして、先生に忘れ物をしたというていで、化学室の鍵を貰う二人。

[メイン] 東横 桃子 : 化学室と、チョコレート。アンバランスな組み合わせ。

[メイン] 東横 桃子 : 内心、あるわけないだろうなぁ、なんて思いながら探し始めたら。

[メイン] 東横 桃子 : ─────あっけなく、見つかるのだった。

[メイン] 東横 桃子 : まるで、ニュートンがリンゴの落ちるさまを見て、重力を発見したように。

[メイン] 東横 桃子 : すとん、と。

[メイン] 東横 桃子 : 「……この気合の入った包装……」

[メイン] 東横 桃子 : 「もしや……探し物はこれ……っすね?」

[メイン] 東横 桃子 : 桃子も、まさかこんな場所で見つかるとは思ってもみなかったため。
少し戸惑いつつ。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……そうみたいだね」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「こんな変な所に置くから、忘れるんじゃないかね」

[メイン] 東横 桃子 : 「あ、あはは……みんなに自慢したくて、ずっと持ち歩いてて……」

[メイン] 佐倉 杏子 : 思ってもいなかったその忘れ物に、呆れつつ。

[メイン] 東横 桃子 : 「それで、化学実験した時に……ここに置きっぱなしにしちゃって……とかっすかね……?」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「多分そうかもねー」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ま、何はともあれ…見つかったっぽいし、渡すのが吉じゃない?」

[メイン] 東横 桃子 : 「そうっすね!……これでうちらの、ミッション達成、っす!」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「放置しすぎたら溶けちまうよ」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ああ、チョコ探索部隊だとかのミッションだったか?」
にやにやとしつつ。

[メイン] 東横 桃子 : 「それに、変な化学物質とかも入っちゃうかもっす!」

[メイン] 東横 桃子 : 「……むむむ!!その顔!またうちのこと、子ども扱いっすー!!」

[メイン] 東横 桃子 : 「とにかく!渡しに行くっす!!ほら、置いて行っちゃうっすよー!!」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「へいへい、落ち着けってーの」

[メイン] 佐倉 杏子 : 顔は崩さず、桃子の後を追いかける。

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン] 東横 桃子 : こうしてうちらは無事、バレインタインデーのチョコ騒動を無事解決したっす。

[メイン] 東横 桃子 : そんなこんなのハッピーエンドの中、チョコを片手にすっ飛ぶクラスメイトの背中を微笑ましく見届けながら。

[メイン] 東横 桃子 : 時間も時間ということで、一緒に杏子さんと帰ることになったわけ、っすけど……。

[メイン] 東横 桃子 : 下駄箱付近で。

[メイン] 東横 桃子 : ちょんちょん、と杏子の背中を突っつく。

[メイン] 佐倉 杏子 : 上履きを履いたまま、ポッキーを咥えており。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ん~?」

[メイン]   : 振り向くも、そこには─────。

[メイン]   : 誰も、いない。

[メイン] 佐倉 杏子 : 背後に感じた感触に、背後を振り向き。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「────あ?」

[メイン]   : コト。

[メイン]   : 杏子の下駄箱に、音が。

[メイン] 佐倉 杏子 : そこにあったのは、無…の中に、一つ。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……あいつは、どこに……」

[メイン] 佐倉 杏子 : がじがじ、どこか寂しさを誤魔化すように頭を搔き。

[メイン] 佐倉 杏子 : ともあれ音を無視することも出来ず、下駄箱をゆっくりと開く。

[メイン]   : ─────そこには。

[メイン]   :  

[メイン]   :  

[メイン]   :  

[メイン]   : 可愛らしい、小さな赤い包み袋が。

[メイン]   :  

[メイン]   :  

[メイン]   :  

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……」

[メイン] 佐倉 杏子 : ああ?

[メイン] 佐倉 杏子 : さっき上履き見た時は何もなかった。

[メイン] 佐倉 杏子 : だから入ったのはついさっきって事にはなる、わけだ。

[メイン] 佐倉 杏子 : ああ……?

[メイン] 佐倉 杏子 : ………クソ、ああもう。

[メイン] 佐倉 杏子 : もう、わかってんだよ……

[メイン] 佐倉 杏子 : ”それ”の答え合わせをするように。

[メイン] 佐倉 杏子 : 杏子には似合わないような包紙を、手に取り。

[メイン] 佐倉 杏子 : 開く、開く。
ぎこちなく。

[メイン]   : そこに、入っていたのは。

[メイン]    : ─────"リンゴ"を模した、チョコレートが。

[メイン]   : そして

[メイン]   :  

[メイン]   :  

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン] 東横 桃子 : 「─────ハッピーバレンタインっす」

[メイン] 東横 桃子 : 杏子の耳元に、囁くように。

[メイン] 東横 桃子 :  

[メイン]   :  

[メイン]   :  

[メイン]   : 杏子の背後に感じた気配はまた、すぅ。と消えていった。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「……」

[メイン] 佐倉 杏子 : はぁ~~~~~~~~~

[メイン] 佐倉 杏子 : マジで、さ

[メイン] 佐倉 杏子 : ガン、と腕が下駄箱に響く。

[メイン] 佐倉 杏子 : わかってたよ!!!!!もう!!!!!
くそっ、くっそぉ!!!!!!!

[メイン] 佐倉 杏子 : ああ、もう!!

[メイン] 佐倉 杏子 : こんなのされたら、されたら……

[メイン] 佐倉 杏子 : ────”嬉しい”に決まってんだろ

[メイン] 佐倉 杏子 : 「く、っそ……」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ももこの野郎」

[メイン] 佐倉 杏子 : 「『ビックリ仰天』、させられちまったじゃんか」

[メイン] 佐倉 杏子 : 口はにやけ、笑みが零れたまま。

[メイン] 佐倉 杏子 : 魔法にかけられた、その”林檎”を手に取り。

[メイン] 佐倉 杏子 : ぱくり。

[メイン] 佐倉 杏子 : ……ああ、うん。

[メイン] 佐倉 杏子 : ”見えないスパイス”は、確かにずっと…甘いな。

[メイン] 佐倉 杏子 : そのまま、背を後ろにして。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「ふ、っ…ふふ……」

[メイン] 佐倉 杏子 : どこにいるかわからない。

[メイン] 佐倉 杏子 : けれど、”いる”。

[メイン] 佐倉 杏子 : そう言ってくれたのだから。

[メイン] 佐倉 杏子 : 「────あんたも、食うかい?」

[メイン] 佐倉 杏子 :  

[メイン] 佐倉 杏子 :  

[メイン] 佐倉 杏子 :